不動産投資とは?利益を生む仕組みと賃貸併用住宅の位置付けを徹底解説

感染症の流行による経済停滞・先行き不透明感、年金システム破綻危機と老後2000万円問題…人口減少が顕著な日本で、私たちを取り巻くお金に関する悩み事は尽きません。そんな中、労働収入以外の収入源として支持されているのが「不動産投資」です。

不動産投資とひとことで言っても投資先は幅広いので、何に投資してどのように利益を得たらよいのか、興味はあるけどよく分からないという方は多いのではないでしょうか。近頃ムーブメントになっているFIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立による早期退職)にオススメの投資先として紹介されることも多い不動産投資、今回はその基本と、不動産投資の中の賃貸併用住宅の位置付けを徹底解説します。

不動産投資とは?〜何に投資してどう利益を得るのか

不動産投資とは、「不動産(土地や建物)を購入して運用・管理し、家賃収入や売却益を得る」投資手法です。投資先は多様にありますが、利益の得方は「購入した不動産を購入時より高価値の時に売って売却益を得る」方法(キャピタルゲイン)と「購入した不動産を他の人に貸して家賃収入を得る」方法(インカムゲイン)の2つです。 例えば、2500万円で購入したマンションの一室を、物件価格が上昇した時に3000万円で売却すると、その差額500万円がオーナーの手元に入ります。これがキャピタルゲインです。

キャピタルゲインの仕組み

一方、同じ部屋を売却するのではなく月9万円の家賃で他の人に貸した場合、年間108万円がオーナーの収入になります。これがインカムゲインです。

インカムゲインの仕組み

大きな違いは、キャピタルゲインは一時的な収益、インカムゲインは継続収入であることです。キャピタルゲインは地価や物件価値など経済の影響をもろに受けるため変動要素が大きいのに対し、インカムゲインは不況下でも値動きが小さい家賃相場を収入源にするため比較的安定しているのが特長です。

投資の目的をどこに置くかにもよりますが、バブル期のように短期的な不動産売買で大きな利益を生むことが難しくなっている状況では、年金対策やFIRE支援のための投資先は安定性の高い商品を選ぶのがセオリーです。特に大きな資産を持たない一般的なサラリーマン世帯の場合、リスク回避のためにも、インカムゲイン狙いが現実的であると言えます。

他の投資商品との比較〜リスクとリターン

ここからは不動産投資で得られる利益=インカムゲインとして定義します。国内不動産投資は、ミドルリスク・ミドルリターンのバランスの良い投資方法と言われています。その理由として、家賃収入が毎月安定して入ること、株式など値動きのある商品に比べてリスクが少ないこと、入居者には保険加入の義務付けが可能なこと、入居の際の審査ができること、などがあげられます。

投資商品別ポジショニングマップ

不動産投資の目的を考えよう

いざ不動産投資を始めようとした時、まず決めなければならないのは「何に投資するのか?」ということです。投資先選びで失敗しないための大前提として、「自分が投資する目的」を明確にしておくことが重要になってきます。

代表的な7つの目的のうち、大きな資産を持たないサラリーマン世帯が不動産投資を考える場合の典型として、1、2、7について考えてみましょう。

  1. 家計キャッシュフローの改善
  2. 年金対策
  3. インフレ対策
  4. 相続税対策
  5. 生命保険の代わり
  6. 信用(ローン)活用
  7. FIRE

家計キャッシュフローの改善

給与所得以外の副収入で生活にゆとりを持たせたい、と考える人が重視すべきは、投資後すぐに月の収支がプラスになるかどうかです。そのためには家賃収入が経費を上回らなければならないので、「利回り」を基準に投資先を選ぶ必要があります。

「利回り」とは、投資金額に対してどのくらいの利益が出るのかの割合(%)を指します。不動産投資の利回りには、「(年間家賃収入÷物件価格)×100」で算出される「表面利回り」と、ここに各種管理費や修繕費、税金などのコストを考慮して計算する「実質利回り」があります。表面利回りが良くても管理費が想定より多くかかり実質利回りが低かった、ということも珍しくないので、投資前の入念なシミュレーションは欠かせません。

表面利回り=(年間家賃収入÷物件価格)×100

【例】
購入金額2500万円、家賃9万円のマンション1室の場合
年間家賃収入:9万円×12ヶ月=108万円
表面利回り:(108万円÷2500万円)×100=4.32%

実質利回り={(年間家賃収入-年間コスト)÷(物件価格+購入時コスト)}×100

【例】
購入金額2500万円、家賃9万円のマンション1室、年間コスト18万円、購入時コスト180万円の場合
実質利回り:{(108万円-18万円)÷(2500万円+180万円)}×100=3.36%

日本不動産研究所の調査によると、東京都内賃貸住宅一棟の期待利回りは4.0〜4.4%、東京以外の地区では4.6〜5.6%となっています。

一般財団法人 日本不動産研究所「第45回不動産投資家調査(2021年10月現在)」
出典:一般財団法人 日本不動産研究所「第45回不動産投資家調査(2021年10月現在)」

ちなみに賃貸併用住宅の利回りは一般的に3〜4%が相場(物件が良ければ5%程度)ですが、自宅部分が約半分を占める(=投資部分が少ない)ため、必然的に通常の賃貸住宅よりも利回りが低めになります。それでも、ミドルリスク・ミドルリターンに類する他の投資商品、例えば株式投資の平均利回り1.74%(日本証券取引所「株式平均利回り(2021年12月)」)と比べると高く、価格変動のリスクも低いので、低リスクで堅く稼ぎたい人にとって効率の良い投資商品であると言えるでしょう。

年金対策

今後、現役人口の減少や平均寿命の伸びを背景にマクロ経済スライド(※)が発動され、年金受給額が下がる可能性が高いです。ローンが組みやすい年齢のうちに将来の生活の見通しを立てておくことが、不安のない老後を送るポイントとなります。

※参考:厚生労働省「マクロ経済スライドってなに?」

将来的に家賃収入を個人年金のように使いたい、公的年金の不足分を補いたい、と考える人が重視すべきは、細く長く安定的な収入が見込めるかどうかです。そのためには、長期的な資産価値を見極め、数十年後も需要が落ちない「立地」で投資先を選ぶ必要があります。

賃貸経営の一番のリスクは「空室」と「家賃下落」。経年劣化による家賃下落リスクはどの物件でも避けられないので、修繕費や設備投資費は必ず必要になる経費です。一方空室リスクの高い/低いは、土地選びでほぼ決まると言っても過言ではありません。単に人気がある地域を選べばよいということではなく、所有する物件のターゲット層に合っているかどうかが肝です。ターゲット層(シングル、ファミリー、高所得者など)に向けた施設や店舗が周辺に揃っているか、アクセスが良いかなどのリサーチと見極めを十分に行いましょう。

リサーチを十分に行った上で、それでも不安が残る/絶対に空室リスクを取りたくない場合は保証会社が提供する「空室保証」や「サブリース(借上)契約」を利用するという選択肢もあります。

FIRE

FIRE実現の大前提となるのは、働かなくても投資の運用益で生活できるくらいの資本を作ることです。

給与収入も年金もない時期に現役時代と同じ生活水準で暮らすのならば、給与収入と同等の不労所得がなければなりません。そのためには、需要が安定した「立地」と「利回り」のバランスで投資先を選ぶ必要があります。

ここでのポイントは、FIRE実現に向けた「資産形成」のための投資と、FIRE後の「生活」のための投資、2段階で目的が異なる投資が必要なことです。資産形成期においては、リターン重視の積極的な投資が求められます。一般的に「25年分の生活資金を貯める」ことがFIREの条件と考えられているので、例えば年間400万円の生活費で過ごすなら目指す資産は1億円になります。

この1億円を元手に、年間の運用収益と生活費が同等になる利益確保(生活費400万円であれば年4%)を目指して資産運用すれば、資産を減らさずに一生暮らしていくことが可能になります。ここからは大きなリスクを取らず、ロー〜ミドルリターンの商品を中心に投資を行っていくのが賢い方法です。

不動産投資はハイリターン商品ではないので資産形成期にベストな投資先とは言えませんが、安定した収入が見込める分、リタイア後の投資先としては有力候補のひとつになります。ローン審査は会社勤めの方が通りやすいので、リタイア後を念頭に置いた物件調査・購入を現役時代に行って下地を作っておくのがポイントです。

不動産投資の種類とメリット・デメリット

どんな投資にもメリットとデメリットがあります。自分が投資する理由と目的を考えたとき、メリットがデメリットを補って余りある場合にのみ投資する価値があると判断できます。不動産投資の特長は、長期的な安定収入が望めることと、ローンを利用して年収の何倍もする価格の物件が購入できることです。反対に、他の投資商品と比べて少額投資が難しいというデメリットがあります。

 【メリット】

  • 長期的に安定した収入が見込める(個人年金や生命保険の代わりになる)
  • 他の投資商品と比べて多くのレバレッジがかけられる(ローンが使える)
  • 管理は管理会社に丸投げできる
  • 保証サービスが使える(空室保証やサブリース契約)

 【デメリット】

  • 投資額が高額になる
  • 空室リスクや家賃下落リスクがある

アパート・マンション経営にせよ、賃貸併用住宅にせよ、最も重要で難易度が高い課題「空室対策」は、プロに管理を任せることで回避できるリスクです。委託管理費はかかりますが、大きな負担なく自己管理の手間を省くことができる利点の大きい方法です。

投資対象別のメリット・デメリット

不動産投資の代表的な投資先を表にまとめました。利回りが高めで家計キャッシュフロー改善のための投資先として有力なのは、一棟アパート・マンション、戸建て、一棟ビルなど。一方、安定収入が見込めて年金対策のための投資先として有力なのが、区分マンション、賃貸併用住宅などです。FIREの後押しとなるのは利回りと安定収入のバランスが良い投資先で、一棟アパート・マンション、戸建て、賃貸併用住宅が候補としてあげられます。

不動産投資の代表的な投資先

マイホーム購入と賃貸経営を一挙に実現できるとして注目されている賃貸併用住宅の場合、条件の良い住宅ローンを利用できることがメリットに加わります。融資元の金融機関や、固定金利か変動金利かにより差はありますが、住宅ローンの金利相場は0.5%前後(変動型)、不動産投資ローンの金利相場はメガバンク・都市銀行で1%前後/地方銀行で1%半ば〜4%半ばと、住宅ローンが圧倒的に有利です。自宅部分が50%以上など住宅ローン融資の条件がありますので、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

また、自宅部分のローン返済を賃貸部分の家賃収入でまかなえるので、実質タダでマイホームを手に入れることも可能です。賃貸部分の戸数にもよりますが、万一空室が出ても通常の住宅ローン返済程度の負担でカバーできることが多く、家計への影響が出にくいのも評価ポイントです。つまり、賃貸併用住宅は一般的な賃貸経営よりもさらにリスクを抑えた「堅い」運用が可能な点で、サラリーマン世帯が手を出しやすい不動産投資物件と言えるでしょう。

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この記事を書いた人

矢澤佑規

・1982年10月7日生まれ
・専務取締役
・建築不動産業界歴20年
・不動産賃貸オーナー
【資格】
二級建築士、宅地建物取引士