賃貸併用住宅の空室対策を徹底分析―データに基づく15のアイデア

賃貸併用住宅に踏み切れない人の多くが、空室期間や賃貸ビジネスそのものへの不安感です。理論上は優れた仕組みであることはわかっていても、実際に大きなお金を出してスタートする勇気がない、空室期間が続いてしまったらどうしようと躊躇してしまうことはよくあります。

今回のコラムでは、様々なデータに基いて“空室対策”を徹底的に分析し、一つひとつ丁寧に紹介していきます。賃貸ビジネス成功のカギを握るのは戦略です。闇雲にスタートするのではなく、運に任せるのでもなく、事前にリサーチし戦略を練ることが重要です。

各フェーズに沿った空室対策

具体的な対策に入る前に、大まかな考え方から説明します。大事なのは入居希望者がどのようなプロセスで入居にいたるかを知り、各プロセスに沿って適切な対策を講じることです。

引っ越しする人の動き

魅力的な物件という土台がある前提ですが、まずはネットで検索の第一フェーズ、候補の物件を内見するために不動産仲介会社を訪問する第二フェーズ、そして入居という決断に直結する内見の第三フェーズに分けて、それぞれ対策を講じます。

対象となる人の数が一番多いのがネット検索の第一フェーズで、ここで多くの人の検索から漏れてしまうと内見まで持ち込める人の絶対数が減るため不利になります。かと言って内見のときに気を抜いても決定力に欠け、空室期間が生まれてしまうかもしれません。

結論、どのフェーズも同じように重要視し、入居率を高めるのがベストです。

魅力的な物件自体が最強の空室対策

具体的なアイデアで対策をする前に土台となる物件の魅力を高めましょう。長期的な空室対策に繋がる魅力的な物件の条件は次の通りです。

  • 時代に左右されない外装と内装のデザイン
  • エアコンや収納などの設備

国土交通省住宅局が発表した住宅市場動向調査では、家賃や立地に続き「デザイン・広さ・設備」が入居理由の上位にあがっています。

民間賃貸住宅の入居理由
グラフ:国土交通省住宅局の平成30年度住宅市場動向調査を元に作成

立地や家賃の重要度が高いのは容易に想像できますが、三つ目のデザイン・広さ・設備を見逃してしまうと空室のリスクが高まります。また、ターゲットを単身者ではなくファミリーにしている場合、立地に関してのこだわりが最大で15%下がり、逆に部屋の数や間取り、設備といった項目の重要度が10%以上高くなる傾向もあります。

こういったデータを把握した上で賃貸併用住宅に踏み出しましょう。

時代に左右されない外装と内装のデザイン

先ほど触れた “時代に左右されないデザイン” の重要性を簡単に説明します。清潔な住宅や新築物件が賃貸としても人気が高いのは当然のことです。賃貸併用住宅を建ててその半分を貸し出しても、最初は新しくてキレイなため、写真うつりもよく入居が決まりやすいです。

ですが20年後、30年後はどうでしょうか?35年間ローンを払い続けるということは、30年後も高い集客力を誇らなければなりません。そこでカギを握るのが “時代に左右されないデザイン” です。時代に左右されないというのは、例えばヨーロッパのデザインのように、時代が変わっても普遍的に素敵だと思われるデザインのことです。

清潔さはクリーニングでカバーできます。設備も部分的にリフォームをすれば解決できます。そこに廃れることのないデザインが加われば、土台となる物件としての魅力は底上げされます。

エアコンや収納などの設備

先ほどの国土交通省のデータでもあったように設備は住居の決定において重要視される項目のひとつです。設備と一言でいっても幅が広く、居住者の属性によってニーズも左右されますので、属性ごとのデータを元に何が重要な設備なのかを見極めましょう。

次に引っ越す際にほしい設備
図:株式会社リクルートの2020年度賃貸契約者動向調査(首都圏)を元に作成

「次に引っ越す際にほしい設備」という質問に対しての回答を見てみると、ファミリー世帯をターゲットとした賃貸併用住宅では、追い炊き機能付きの風呂が欠かせない設備となることがわかります。その他、単身の社会人女性と比較するとどうしても割合が低く見えてしまいますが、エアコン、独立洗面台、TVモニター付きインターフォンも高い需要を示しています。

また、現在の設備に対する満足度を見ると、スマートキーや非接触キーが使ってみると意外と便利ということで満足度を高めているようです。

設備に対する満足度
図:株式会社リクルートの2020年度賃貸契約者動向調査(首都圏)を元に作成

どの設備に力を入れるかはターゲットとなる入居者の属性に合わせて決めるのが得策です。そしてもうひとつ大事なのは、近隣の競合が備えていない設備を備えて差別化を図ることです。

例えば、近隣にある賃貸物件の築年数が古ければ、TVモニター付きインターフォンやフローリングを敷いて差別化すると集客力が高まります。逆に周りの物件がほぼ全てエアコンや追い炊き機能付きの風呂を完備していれば、同じ設備をそろえないと太刀打ちできません。ライバル物件との差別化は最も意識すべきポイントと認識してください。

間取りにおけるアドバイス

賃貸併用住宅を建てる際は生活動線を考えた設計を心がけてください。極端な例を挙げると次のような物件は人気が落ちます。

  • 洗濯機がベランダにある
  • トイレが奥まった場所にある
  • 玄関を開けるとリビングが見える

そんなの分かってるよと思う方もいるかもしれませんが、限られた土地の中で理想の間取りを実現するのは意外と難しいものです。ハウスメーカーと相談しながらマイナス要素を消せるよう心がけるとよいでしょう。

ネット検索のフェーズでの空室対策

魅力的な物件を建てたら、今度はその物件を見つけてもらわなければなりません。物件としての価値が高く、かつ各フェーズでの空室対策に万全を期せば、空室リスクへの不安に駆られる可能性が減ります。

とにかく写真が大切

このフェーズでの空室対策として一番重要なのは何といっても写真です。Suumoの調査では、賃貸契約者は不動産会社に何よりも“写真の点数が多い“ことを求めています。

画像引用:suumoジャーナル「賃貸、購入で契約した人が不動産会社を選ぶときに重視したポイントは?

また、部屋を探している人が不動産会社の店舗を訪問する回数が年々減っているという事実もあります。この傾向はコロナが蔓延する以前から見られています。つまり、より多くの人がまずネット上で物件を検索し、ふるいにかけていることになります。 時代に左右されないデザインと人気の設備を備えた物件であれば、なおさら写真の質と量にも気を使い、確実に内見者数を増やしましょう。

ペット可にして差別化

ペット飼育者が物件を探してから契約に至るまでの期間は、ペットを飼っていない人と比べて一週間以上長いというデータがあります。また支払っている平均賃料も1万7千円高く、立地を重要視する人の割合もペットを飼っていない人より5%下がります。ということは、ペット飼育者は物件探しに苦労した後に妥協して決めているケースが多いと推察できます。

コロナの影響でペット飼育者の数が増えている事実もありますし、近隣との差別化として “ペット可” にするのは秘策となりえるでしょう。ペット可の中でも何頭まで可とするのか、どの種類を可とするのか細かな条件を設定することもできますので、近隣の物件の条件を調べて差別化戦略を立てみるのもありかもしれません。

※参考資料:株式会社リクルートの2020年度賃貸契約者動向調査(首都圏)

楽器可にして差別化

楽器可も考え方としては同じです。ライバル物件にない条件をオファーすることで、比較される物件が少なくなるため一件あたりの入居確率が上がります。

例えば立地にそこまで自信がない、家賃設定に自信がないという人は、楽器可やペット可を加えることで集客力を高めることができます。

楽器可にして差別化

家賃据え置きで駐車場代込み

空室対策として家賃を下げるという究極の方法がありますが、家賃の値下げは中長期的に見ると家賃収入の目減りに直結します。家賃収入が減ると自己負担でローンを返済することになったり、原状回復コストの積立て試算もやり直す必要があります。

そこで代替案となるのが、家賃を据え置いたまま駐車場料金を無料にすることです。手元に入ってくる最終的な金額は同じでも、「駐車場料金無料」という検索項目に引っかかるようになるのが大きな強みとなります。

※間取り別の現状回復コストを知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。

アイデアは自由!自転車プレゼント

賃貸併用住宅は2世帯以上が住む家です。普通にマイホームを建てるより大きな土地と建物が必要になります。もしそんな大きな家を駅近に建てるのとなると価格が予算オーバーしてしまうかもしれません。一方、予算内で納めるためには駅から遠くなるが、そうなると集客力が下がるというジレンマがあります。

ですが、多少駅から離れていてもアイデア次第では高い集客力を発揮します。例えば入居者に自転車をプレゼントするなど奇抜なアイデアで訴求する手があります。先の項目でも説明したような時代に左右されないデザイン、ニーズの高い設備、そしてデメリットを克服する自由なアイデアで差別化することで、優良物件に様変わりします。

仲介会社訪問時の空室対策

続いて仲介業者を訪問する第二のフェーズです。ここで重要なのは仲介業者の負担を極力減らし、自身の物件を紹介しやすくしてあげることです。

どんなに真面目な人間でも、無意識に手間を避けてしまいがちなものです。具体的にできる営業マンの負担軽減策を紹介しますので、実戦して内見数を増やし、空室対策に繋げてみてください。

鍵の受け渡しをスムーズに

賃貸ビジネス未経験者が普通は知らないような手間やプロセスがたくさんあります。鍵の受け渡しもそのうちのひとつです。不動産仲介業者が物件を見せるために一度オーナーの家に鍵を取りに行くという手間が発生すると、どうしても案内が非効率的になります。ましてや手渡しを希望して受け渡し時間に制限が出るとなおさら面倒です。

賃貸併用住宅の場合、オーナーが住んでる建物に来るわけですから、まず鍵受け渡しの手間は省けます。ただし理想形はキーボックスなどを用意し、仮に家に誰もいなくてもスムーズに鍵を渡せる状態を作っておくことです。

契約書の文言を簡潔化

契約書等が複雑であると、入居希望者への説明も大変になりますし、まず読むのが億劫です。できるだけ分かりやすい文言にすれば、営業マンだけでなく、入居希望者とオーナーの三者全員にウィンがある状態になります。

営業マンとコミュニケーション

色々な形態があってよいかとは思いますが、営業マンと良好な人間関係を構築しておくに越したことはありません。お金を払うからと割り切るのは簡単ですが、人間だれしも好意を抱いている相手には親切になります。できる範囲でポジティブなコミュニケーションを取り、関係性を高めておくのが得策です。

内見時の空室対策

ようやく最終フェーズに入ります。内見はダイレクトに印象を与えることができる機会なので、ここで空室対策の工夫を加えれば入居率が高まりますし、逆に手を抜くと近隣のライバル物件に奪われてしまいます。

内見時のポイントはとにかく好印象を与えることです。比較的簡単にできる具体的な施策を紹介します。

  • スリッパを置く
  • 空気をリフレッシュさせておく
  • 照明を付けて天候に関わらず室内を明るくさせておく
  • 悪臭がこもっていないか確認

これって自分がやることなのかと疑問に思う方もいるでしょう。管理会社にもよりますが、一般的に管理料5%、広告料一か月といった報酬の範囲内では採算が合わず、追加費用のかかる工夫ができないことが多いです。

上記の空室対策は少ない費用と手間でできる範囲ですので、実施してみてはどうでしょうか。